「どうやってトイトレを進めたらいいかわからない…」「どこまで介助すべき?」
そんな悩みを抱える保護者の方へ。
この連載では、肢体不自由児の排泄支援に長年携わる専門家が、皆さんのリアルなお悩みにお答えします。
質問に答えてくれる先生
障がい児排泄支援の専門家 髙橋賢太郎先生

理学療法士、公認心理師。横浜市の療育センターで15年、発達障害・肢体不自由児の療育に従事。現在は鎌倉市内の学校・医療機関・通所施設でADL・排泄支援やカウンセリングを提供。
排泄支援ハンドブック「こころと体に合った排泄スタイル」制作に携わり、キッズデザイン賞を受賞。
発達障害や肢体不自由児の療育に携わった25年の経験を元に、理学療法士と公認心理師の双方の視点から、子どもと家族を包括的に支援する専門家。
【今回の相談内容】「親が疲れてしまってトイトレが進みません…」

▼相談者さん
ニックネーム:kaoru
お子さんの情報:8歳・知的障害・肢体不自由
お悩み:
小学2年生の娘を育てています。娘には知的障害と肢体不自由があり、移動や着替え、日常生活のさまざまな場面で介助が必要です。
これまで何年も排泄の練習を続けてきました。トイレに座ることから始まり、最近ではタイミングが合えばトイレでおしっこができることも増えてきました。少しずつ成長していることは感じていますし、できた時は家族みんなで喜んでいます。
その一方で、「次は何を目標にしたらいいのだろう」「トイレに行きたいことを教えてくれたらと思うけど、到底難しそうだしここが限界なのかな」と迷うことも増えてきました。
娘のトイレには移動や着脱の介助が必要なので、忙しい日はオムツに頼ってしまうこともあります。
また、せっかくトイレに連れて行っても出なかったり、数分後にオムツで排泄してしまったりすることもあり、正直なところ「そんなに頑張っても仕方ないのかな」と思ってしまう日もあるのが本音です。
周りからは「少しずつ成長しているね」と言ってもらえるのですが、毎日関わっている私からすると、最近はトイレの時間になると「これがずっと続くのか」と思ってしまい、以前より気持ちが重くなってしまいます。娘のためにもトイトレを続けたい気持ちはあるのですが、親である私の方が疲れてしまっているような気もします。
こんな時は、一度トイトレや排泄練習をお休みしてもよいのでしょうか?
また、長い目で取り組むために、どのような気持ちで向き合えばよいのでしょうか。
髙橋先生の回答
お子さんが成長して身体が大きくなってくると、移動や着脱の介助は肉体的にも負担が大きくなりますよね。「これがいつまで続くのだろう」と先が見えず、親御さんの方が疲れて気持ちが重くなってしまうのもごく自然なことです。
ただ、ご家族が疲弊してしまうと、お子さんにも影響が出かねません。もしためらう気持ちがあれば、「1ヶ月」など期間を決めて、思い切って一度トイトレや排泄練習をお休みすることをおすすめします。勇気を持って休むことも、大切な選択肢の一つですよ。
これまで何年もトイトレを頑張ってこられ、トイレでおしっこができるようになったのは、ご家族の努力による素晴らしい成果です。 一方で、せっかくトイレに連れて行っても出なかった時(空振り)の徒労感や疲労感はとても大きいですよね。
さらに「自分から教えてくれる」といったわかりやすい次の成長目標が見えにくいことで、モチベーションを保つのが難しくなり、「頑張っても仕方ないのかな」と感じてしまっているのだと思います。
一度お休みして、心と体が少し回復したら、長い目で取り組むために以下のステップを試してみてください。
休み明けは「オムツが濡れていない時間(ドライタイム)」の記録から
トイトレを再開する時は、オムツが濡れていない時間(ドライタイム)のチェックから始めてみましょう。一定期間記録することで、お子さんの今の排泄機能を客観的に把握できます。
その記録を元に「出そうな時間」に絞ってトイレに誘うことで、空振りを減らし、介助の無駄な労力を減らすことができます。
短時間の「パンツタイム」で成功体験を
オムツが濡れていない時間(ドライタイム)が分かってきたら、その乾いている時間帯にパンツを履く経験もしてみましょう。
最初は短時間(15分程度など)からで構いません。ポイントは「失敗(お漏らし)する前にオムツに戻す」ことです。「濡れずにパンツで過ごせたね!」と褒めることで、お子さんの自信につながります。トイレでおしっこができることと同じくらい、オムツやパンツを濡らさずに過ごせたことも大きく褒められるべきことなのです。
介助者を増やし、チームで取り組む
オムツが濡れていない時間(ドライタイム)の記録をつける最大のメリットは、ご家族以外の人(学校の先生やヘルパーさんなど)と情報共有しやすくなることです。
「この時間なら出やすいです」と客観的なデータで伝えられると、学校でのトイレの時間やヘルパーさんにお任せする時間が明確になり、支援者も取り組みやすくなります。すべてをご家族で抱え込まず、介助者を増やすことが長く続けるためのコツです。
トイレのゴールは「一人で全部できるようになること(自立)」だけではありません。人に頼んだり、道具を使ったりしながら、ご本人やご家族が心地よく排泄できる「自律」の形を見つけていくことも立派な成長です。
これまでの努力は決して無駄にはなりません。まずはお母さん自身が一度ゆっくりと休んで、またご家族と周りのチームで一緒に、お子さんに合ったペースで進めていってくださいね。
トイトレ博士のミニ解説



今回のお悩みには、以下の記事も参考になりそうじゃな






【今回のまとめ】休むことも、前に進むための大切な選択肢
- 親が疲れてしまうのは決して珍しいことでも「だめ」なことでもない
- トイトレや排泄練習をお休みしても大丈夫(ただしお休み期間を決めておくのがおすすめ)
- オムツが濡れていない時間(ドライタイム)を活用すると、無理のない目標を立てやすい
- 学校や支援者と情報共有し、チームで取り組むことも大切
- 目指すのは「完璧な自立」だけではなく、その子らしい「自律」の形



長く続く排泄支援やトイトレでは、お子さんだけでなく家族が心身ともに元気でいることもとても大切なんじゃよ。「疲れたな」と感じたら、少し立ち止まって休むことも立派な支援のひとつじゃ。
どうしても「トイレでできるか」に目が向きがちじゃが、オムツが濡れていない時間が増えたことやパンツで過ごせた時間も立派な成長の証。
家庭内や学校、支援者とも力を合わせながら、お子さんと家族のペースで「チーム」で進んでいけるといいのぅ。
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