オムツを使用している障がい児を育てている皆さんは、子どもの排泄ケアについて改めて考えたことがありますか?

これからもオムツだと思うので、トイレについて深く考えたことはない



オムツをしているからある程度の介護負担は当たり前
そんな風に思っている方もいるのではないでしょうか。筆者も同じでした。
しかし、オムツの卒業(=トイレの自立)が難しい場合でも、本人と家族がもっと快適に暮らすための「トイレの自律」は目指すことができるんです。
この記事では、トイレの自律とはいったいどういう考え方なのかを中心に、障がい児の排泄ケアについて紹介していきます。
障がい児排泄支援の専門家 髙橋賢太郎先生


理学療法士、公認心理師。横浜市の療育センターで15年、発達障害・肢体不自由児の療育に従事。現在は鎌倉市内の学校・医療機関・通所施設でADL・排泄支援やカウンセリングを提供。
排泄支援ハンドブック「こころと体に合った排泄スタイル」制作に携わり、キッズデザイン賞を受賞。
発達障害や肢体不自由児の療育に携わった25年の経験を元に、理学療法士と公認心理師の双方の視点から、子どもと家族を包括的に支援する専門家。
「今のままじゃだめ?」どうして排泄ケアについて考えるのか
排泄は、障がいの有無や発達段階に関わらず、子どもにとってとても重要な営みです。それは、単なる“身体的な排出行為”ではなく、子どもが持つ以下の4つの子どもの権利にも深く関わっているからです。
1. 生きる権利
排泄は「喋れる・喋れない」「歩ける・歩けない」「トイレに関心がある・ない」に関わらず、全ての子どもに一日数回繰り返される、生きていくうえで欠かせない生理現象です。排泄の在り方が大切にされることは、その子が安心して「生きる権利」を支えることに繋がります。
また、排泄について深く知ることは、子どもの身体や成長の理解を深めることにもつながります。 介助者にとっても、子どもの小さな変化や成長を発見できる大切な機会なのです。
2. 育つ権利
排泄には、子どもの成長につながる多くの要素が含まれています。
- 感覚:尿意や便意といった身体の感覚を感じ取る
- コミュニケーション:大人とコミュニケーションをとる
- 運動:トイレに行き、排泄し、後片付けをする
こうした経験を積み重ねることは、排泄を通じて自分の体の感覚を学び、介助者との相互作用の中で心身ともに成長していく機会を得ることにつながります。これは、全ての子どもに保障されるべき「育つ権利」の一部でもあります。
また、排泄を通じて得た動作や意思表示などの学びは、他の日常生活の行動にも広がっていきます。さらに、排泄を通して得た達成感や満足感は、子どもの心理的な成長を支える大切な土台となります。
3. 守られる権利
全ての子どもには、身体的・精神的に安全で、安心できる環境で過ごす「守られる権利」があります。排泄の場面において、プライバシーへの配慮や心地よい環境が整えられることは、その権利を守ることにつながります。
排泄を通して自分の体の状態やサインを受け取ってもらい、安心して排泄ケアを受ける経験は、オムツが外せるかどうかという結果以上に大切です。一人の人として尊重された体験が、心の成長に直結します。
4.参加する権利
適切な排泄習慣や環境を整えることは、家族との外出や社会との関わりの幅を広げ、子どもの「参加する権利」を支えることにつながります。



つまり排泄は、どの子どもにとっても「生きることそのもの」なんじゃ。周囲の大人がその子の排泄リズムを理解し、適切に配慮しケアすることは、その子の存在を尊重し、健やかな心身の発達を支えることに繋がるんじゃな。
トイレの自立と「自律」の違い


排泄ケアの重要性がわかったところで、



オムツの卒業は難しいし、「排泄ケアを整える」といわれても正直ピンとこない…
そう思う方もいますよね。前提として、トイレの自立(オムツ卒業)は難しくても、子ども一人ひとりに応じたゴールを設定して、トイレの自律を目指すことはできます。
ここからはトイレの「自立」と「自律」の違いについて解説していきます。
トイレの自立
トイレの自立とは、トイレで排泄ができ、オムツを外せている状態を指します。ここで重視されるのは、「オムツを外す」という結果が達成できているかどうかです。
▼障がいや特性がある子どものトイトレ支援のポイントはこちらの記事で詳しく解説しています




トイレの自律
一方で、トイレの自律とは、オムツを外すことをゴールにはしません。たとえオムツを履いていても、排泄の流れの中で本人が主体的に関わり、家族も無理なく快適に過ごせているプロセスを大切にします。
具体的には、子ども本人が身体の感覚をキャッチし、周囲とコミュニケーションを取りながら、心地よさを追求する「主役」として過ごせている状態です。
たとえば以下のような関わりもトイレの自律です。
- 自分なりの伝え方で、排泄したことを自分から伝える
- 足を開く、腰を浮かすなどオムツ交換に協力的な姿勢をとる
- 水を流す、お尻を拭くなど排泄の流れの中でできることを自分で行う
トイレの自律のための4ステップ
では、どのようにしてトイレの自律を目指していけばいいのでしょうか。ここでは、「トイレの自律のための4ステップ」をご紹介します。
4つのステップとして紹介するけど、順番を前後したり、できそうなところから始めても大丈夫!障がいの内容や程度によって「できる・できない」もあると思うけど、本人も家族も、無理のない範囲で試してみてね。
【排泄ケアのステップ①】ドライタイムを確認する
まずは、オムツの濡れていない時間(ドライタイム)を確認し、膀胱の成長度合いや排泄のリズムなどを知るところからスタートします。
▼ステップ①の具体的な方法はこちらの記事から


【排泄ケアのステップ②】環境を整える
排泄する場所の環境や、オムツ・パッドなどの物品、オムツ内の状態などを観察し、その子に合った形に整えてみましょう。
▼ステップ②の具体的な方法はこちらの記事から


【排泄ケアのステップ③】タイミングを見直す
排泄リズムが見えてくると、オムツ交換のタイミングも調整しやすくなります。濡れている時間が短くなることで本人の不快感が減り、より快適に。介助する側も「そろそろ替え時かな」がつかめてくると負担感がぐっと減ります。
▼ステップ③の具体的な方法はこちらの記事から


【排泄ケアのステップ④】心地よい生活にする
トイレの臭いの悩みや外出時のトイレ問題などを一つずつ軽減し、子ども本人も家族も無理なく、心地よく日々を過ごせる状態を目指します。
▼ステップ④の具体的な方法はこちらの記事から


子どもに合った「トイレの自律」を目指そう


トイレの自立が難しくても、排泄を通じて育まれるものはたくさんあります。
オムツを使っていても、子どもが排泄の流れに関わり、家族も無理なく過ごせている状態は、立派な「トイレの自律」です。
大切なのは、できる・できないで評価することではなく、その子に合ったペースや方法で排泄に向き合うこと。今の関わり一つひとつが、子どもと家族の暮らしを少しずつ整えていきます。
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